トンネル、橋の工法 平成23年 3月

1.トンネル

(1) NATM工法

この四半世紀山岳トンネルはNATM(ナトム)工法が多くなっています。NATM(New Austrian Tonneling Method)は吹付コンクリートとロックボルトを使う方法で、オーストリアで生まれ、日本で育った技術です。

NATM工法では、トンネルが周囲から地圧によって押されることにより、その周囲の岩が、吹付けコンクリート,ロックボルトとともに一体化した構造物となって、より強固なトンネルとなります。つまり砂遊びでトンネルを作ったとき、トンネルの周りの砂が湿った状態であると壊れにくいのと似ています。

三遠南信自動車道の名号トンネル・久井田トンネル(渋川トンネル)・三遠トンネルのプレート板にはトンネル工法はいずれもNATMと標してあります。(平成23年3月記)

当HPの近くで完成した630mの乗小路トンネル(平成28年3月開通)も、NATM工法で行われました。(平成28年6月追加記事)

三遠トンネル入口。避難坑上にロックボルトが使われている。 名号・久井田(渋川)・三遠トンネルのプレート板。トンネル工はNATMと標してある。
乗小路トンネル掘削先端 乗小路トンネル。支保鋼材の間に吹付コンクリートとロックボルトが見える

(2) 巨大トンネル

全国で長大トンネルは関越トンネル(11.1km)、飛騨トンネル(10.7km)、東京湾アクアトンネル(9.6km)、恵那山トンネル(8.6km)となっています。(平成22年2月)

平成22年12月4日東北新幹線が青森まで全線開通しました。開通している鉄道では、この東北新幹線の八甲田トンネルが陸上トンネルでは世界最長の26.5kmです。工法はやはりNATMでした。

スイスのアルプス山脈を縦断するゴッタルドベーストンネルが、2010年(平成22年)10月15日に貫通しました。長さは世界最長の57kmで、主にTBM(トンネルボーリングマシーン)で掘削したということです。アルプス山脈を南北に縦断する鉄道で、開業は2017年ということです。

因みに、いま日本で検討されているリニア新幹線で、南アルプストンネルは20km程度です。


2.橋の工法

(1).ベント工法
橋脚と橋脚の間に仮の橋脚(ベント)を立てて橋桁をそのベントで支えながら順次クレーンによって架設していく工法です。最も一般的な工法です。

静岡市静清バイパスの橋梁架設工事。

鳳来峡IC工事のベント

鳳来峡IC工事のベント
(2).送り出し工法
川、鉄道など橋桁の下にトラッククレーンが設置できない場合に使用する工法です。手延べ機の先端が、向側の橋脚に届けば、後はひたすらつないで押すだけです。「手延べ機」とは先端に付ける比較的重量が少ない構造物をいいます。


国道23号線梅田川橋梁架設工事(2013.3撮影)

梅田川橋梁架設工事(2013.2撮影)
(3).ケーブルエレクション工法
橋桁の下が谷間などでベントが設置できない場合に使用する工法です。両端に鉄塔を建ててケーブルを渡し、ケーブルキャリアで鉄骨やブロックを運ぶ工法です。アーチ橋で多く採用されています。「エレクション」とは「桁を現場で架設すること」と言う意味です。

国道151号線新野峠付近のもみじ橋(2007.12撮影)

資材運搬ケーブル

鉄塔
(4).トラベラクレーン工法
川、道路、鉄道など桁下にトラッククレーンが設置できなくて、トラス桁あるいはブロック桁が数径間あるなどの条件の場合、採用される工法です。「片持ち式工法」ともいいます。桁の1方向が固定され、他方のみを延長する工法です。

     わらび橋(鳥取県東伯郡関金町 )   (写真 日本車輌)    新犬山橋(愛知県犬山市)  
(写真 日本車輌)
(5).大ブロック工法
フローチングクレーンと呼ばれる大型の船舶型クレーンを使用して架設する工法です。橋脚と橋脚を一跨ぎに出来るため、ステージングなど不要です。安全性と経済性に優れた工法です。「ステージング」とは仮足場をいいます。

東京湾横断道路(千葉県木更津市)      (写真 日本車輌)
(6).ディビダークカンチレバー工法
通称「ヤジロベー工法」あるいは「片持ち張出し架設工法」と言い、地上からの支えなしに、空中張出しを行い、橋脚の両側に移動作業車を組み立て、左右にバランスを取りながら進めてゆく工法です。コンクリートを打ちながらピアノ線の束を内部に通して強力に腕の両端を引っ張って、張り出し部分を支えています。鉄骨橋ではありません。

ドイツディビダーク社が考案しました。日本でこの工法で作られた橋は2000余ということです。浜名大橋の支間長はこの工法では日本で2番目に長い240mです。島根県の江島大橋(250m)が日本一(世界では3番目)です。(平成22年2月現在)


新東名新城高架橋(2012.5撮影)

浜名大橋 ディビダーク工法で造られました。
すでに32年経ちましたが、建設当時は世界最長でした(2010.11撮影)
新東名新城高架橋(2012.5撮影)


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